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大阪地方裁判所 昭和59年(わ)838号 判決 1984年6月28日

主文

被告人を懲役一年に処する。

この裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、韓国に国籍を有する外国人であつて、昭和四八年一〇月二〇日ころ、本邦に入国し、大阪府東大阪市柏田西一丁目一四番三一号所在の三誠化学工業所寮等に居住していたものであるが、右上陸の日から六〇日以内に所定の外国人登録の申請をしないで、その期間をこえ、昭和五八年一二月六日ころまで、同所等本邦に居住在留したものである。

(証拠の標目)<省略>

(弁護人の主張に対する判断)

弁護人は、被告人の本邦入国の年月日は、犯罪事実の重要な客観的部分であるから、この事実の認定には自白だけでは足りず、補強証拠を必要とするとし、かつ、取調証拠中右事実を補強する証拠は存在しないから、右事実の認定はできず、したがつて被告人は無罪である旨主張するが、右につき補強証拠を必要としないので、弁護人の主張は採用できず、以下この点について当裁判所の判断を示すこととする。

昭和五五年法律六四号附則二項により、同法による改正前の外国人登録法三条一項は、本邦に在留する外国人は、本邦に入つたときは、その上陸の日から六〇日以内に所定の登録の申請をしなければならないとし、「上陸の日」は本件犯罪の客観的構成要件事実であることは明白である。

しかし、他方、補強証拠は、自白にかかる犯罪事実の全体をもれなく裏づけるものでなくとも、その真実性を保障しうるものであれば足りることから、客観的構成要件事実の全部または重要な部分について常に補強証拠を必要とするものではない。

そこで、本件犯罪についてみると、本件犯罪は、継続犯であるから、上陸の日から六〇日以内に登録申請がなされないまま本邦に在留する限りにおいて、本件犯罪が継続していると解されるところ、被告人が本邦に六〇日をこえて在留しているという事実が他の証拠によつて補強されれば、本件犯罪が十分成立し得ることは明白であり、従つて、「上陸の日」に関して補強証拠が存在しない場合であつても、本件犯罪の成立に関する自白の真実性は充分保障されたとみることができる。

ところで、本件において登録不申請の事実は、法務省入国管理局登録課長作成の外国人登録照会に対する回答書謄本によつて補強されており、六〇日をこえて本邦に在留していた事実は、鄭誠守の各供述調書等によつて十分補強されている上、被告人の自白内容も十分信用できるので、本件犯罪の認定については、証明十分である。

よつて弁護人の主張は採用できない。

(法令の適用)

被告人の判示所為は、外国人登録法一八条一項一号、昭和五五年法律六四号附則二項により同法による改正前の外国人登録法三条一項に該当するところ、所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期の範囲内で被告人を懲役一年に処することとし、情状により刑法二五条一項を適用して、この裁判の確定した日から二年間右の刑の執行を猶予することとし、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文により全部これを被告人に負担させることとする。

よつて主文のとおり判決する。

(田中正人)

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